2015年6月1日月曜日

「できません」と言う力-ろう者と自閉症者の話から-

デフコミュニティという言葉がある。
「ろう者社会」と訳すことができる。

耳の不自由な方の世界については全く無知ですが、
今までに耳の不自由な方と一緒にお仕事をしたり、
知人として接したり、
また主人が仕事で関わった経験談を聞いたりしたことがある。
また、本で「デフコミュニティ」について、非常に興味深く読んだことがある。

その中で、いろいろな気付きがあった。
それは、ただ耳が不自由だという問題では片付けられないこと。
音の情報がないことで、様々な困難があるのだな、ということ。
そう、音が聞こえたら自然に気付くであろうことが、
その空気感がわからなくて困っておられる方が少なからずおられるということ。
・・・・・

自閉症者と重ね合わせて、似たところがあるかもなと思う。
自閉症者もまた、音の情報は拾えたとしても、正しく音の情報を拾えなくて苦労している。
よく言われるのは、聞き取らないといけない音と、そうでない音の区別がつかず、
どれも同じように拾ってしまうため混乱する、という類のことだ。
また、周囲を見る力も弱いので、誰かが情報発信していても、
それに気付かないという問題もあるのだ。
・・・・・

うちの息子も音には非常に敏感で、苦手な音がたくさんたくさんある。
いつもパチンコ屋さんの店内に居るような感じではないかと思う。
とても辛そうだ。

こんなに過ごしやすい時期なのに、
息子は家に入ると、すべての窓を閉めてしまう。
暑いから開けようよ、と言ってもどうしても嫌なようだ。
おそらく、山の上の閑静な(というか田舎な)住宅街にある我が家であっても、
鳥の声、風の音、車の音、いろんな音がかすかに聞こえてきて、安らげないのだろう。

だから、病院とか学校とか、もう大迷惑な世界なハズなのである。
・・・・・
 
現在講師を担当している通信講座で、
(おそらく)少し耳の不自由な方を担当させていただくことになった。

この方は、とある工場のライン作業者であり、
仕事中、無線で指示をうけているらしい。
当然聞き取れず、何度も聞き返すことになっているらしい。
この方の仕事へのモチベーションは下がる一方である。
当たり前だ。

それに気付かない会社、上司もどうかと思う。
しかし、本人が「無理です」って言えばいいじゃないか、
と思われる方が多いのではないだろうか?

ここがポイントである。
 
・・・・・
 
私の息子はわからないと
しらーっとどこかへ行ってしまったり、
走り回ってしまったりしてしまう。
 
先日も、支援学校の運動会のダンスで
「このダンスが始まると、とにかく走り回るんです」
と報告を受けていた。
「楽しいんですか?興奮しているんですか?ダンスは嫌いですか?」
先生はいろいろ問うてくださった。

ダンスを見ていないのでわからず、
いくつか
「こんな方法はいかがですか?」と伝えてはみたが、
当日様子を見てわかった。

彼は「わからなくて困っている」のだ。
決して「踊る」ことが嫌いではないのだ。
準備体操の「ラジオ体操」だってやっていたし、
小学校の時の「なんとか節」みたいなのもちゃんと踊っていた。

今回の支援学校のダンスは
「三代目 J Soul Brothers」のダンスそのものだった。
あのファジー感は彼にはお手上げだ。

彼もちょっと見て、これはやらされたとしても
ボクには処理しきれない、勘弁して~
と思ったんだろう。
 
だけど、それを伝えることができないから、
問題行動を起こす。
 
結構模倣だってするし、指示すればできることも多い子だし、
このダンスだって、普通にできるでしょ?
先生からは、そう見えるんだろう。
でも、無理だ。それを伝えられない。
・・・・・
 
通信講座の生徒さんの話に戻る。

この方も、いろんな情報が入らなくて大変だったことに加え、
その辛い状況を周りに発信する、という経験が少なかったのだろう。
空気感で、それが学べなかった、という悲しい実情もあるのだろう。
そして、教えても貰えなかったのだろう。
辛い状況にあっても、訴えて良いと判断ができなかった。

しかし、別の部分では「担当ラインを変えて欲しい」
という主張をされているとも書いてある。
この主張は、おそらく私が上司であっても受け入れられない主張なので、
却下されている。

できるだけ具体的に
「こう行動してみてはいかがでしょうか」と
書いてはみたものの、
それだけではどうしようもないかもな、
と悲しい気持ちになる。

どこまで介入していいのかはわからないが、
ちょっとの改善で、この方が働きやすくなり、
モチベーションがあがり、
仕事を辞めてしまう、というようなことを防ぐことができたら、
そんな気持ちでいる。

顔の見えない間柄だからこそ知り得た情報でもある。
少しアクションを起こしてみようと思う。

・・・・・

彼らの困り感は、単純ではない。
そして「ふつう、○○でしょ」
のようなことが判らなかったりする。
「できません」と言っていい場面と、
言ってはいけない場面が、
判断できなかったりする。

・・・・・
 
通信講座では、とても優秀な人もお見かけするが、
このように、誰かが介入しなければマズイかも、
という人も見かけることがある。
どちらも大切な生徒さん達。
 
・・・・・

世の中にはいろんな人がいる。
「これはマズイかも」「こうしてみたらどうだろう?」
と感じる感性は、
日に日に磨かれていっている。

困っている人が、少しでも自分のことが伝えられて、
それによって周りから認められて、
お仕事が続けられるのも、
人の幸せにつながる、と思う。
・・・・・
 
ただいま添削中
タカマミー

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