2015年11月27日金曜日

こだわりの修正

発達障害、特に自閉症と呼ばれる人達には、
「こだわり」が多く見られます。

”私は、和食を作る時、出汁のとりかたにこだわっています!”
とか、
”こだわりの洗車方法があります!”
とか、
本人の好みの範疇であったり、
独自の素敵な方法を持っている、
という「こだわり」だと良いのです。

しかし、自閉症の人のこだわりは、
良いこだわりよりも、
ネガティブな意味でのこだわりが非常に多いのです。

必要以上に時間がかかってしまうようなこだわり、
人に迷惑をかけてまでしてしまうこだわり、
体調を崩してしまうようなこだわり、
栄養を偏らせてしまうこだわり、
そのようなこだわりは、ネガティブと言わざるを得ません。

そのようなその人や周りの人を苦しめてしまうようなこだわりは、
非常に厄介です。

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私が関わっている学童期のお子さんの例です。

学習面で遅れがあると言われています。

しかし、一緒に学習をしていて、ものすごく理解力がないか、
と言われれば、そうでもありません。

整理して紐解けば、しっかり理解して解を出せる子です。

でも、学力が定着しないのです。

その理由の一つに、ノートの書き方へのこだわりがあるのかも、と思いました。

ノートの空いている箇所をなくすべく、
定規で区切ってでも、すべてのマスに詰めて書いていきたいのです。

したがって、ノートを見返したとき、何がどこに書いてあるか、
よくわかりません。
答え合わせも、丸つけも、困難なノートです。
 
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周りの人は、
「それはその子のこだわりなんです。なかなか直らなくて。」
と言います。

結構素直なお子さんなのに、直らないもんなんだなぁ。
そんな感想を持っていました。

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やってみたこと。
それは、ノートをもう一冊用意して、
「さあ、今までの書き方をちょっと置いておいて
私と同じように真似して解答を書いていこう。」
と隣で見本を書くこと、です。

定規で区切ることはどうやら好きのようなので、
赤線でドリルの区切りをつけたり、
(1)を四角く区切ったりしながらも、
とにかく1問ずつ改行していくことを目指しました。

実は、私の前にも、同じように実施した支援者がいたので(相談しました)、
今回、この方法が2回目でした。

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結果、全く問題なく支援を受け入れて、改行して書いてくれました。

元々は素直なお子さんなので、こだわりをどうしても通す、
というほど頑固なタイプではありません。

あとは、これを根気強く続けていき、
やがてそのお子さん一人の時でも改行していけるように
支援をしたりゆるめたり、していくことでしょうか。
具体的には、授業の時に、黒衣となって入り込みたいなと思っています。

もう少し学年が上がれば、テストの為にノートを見返して勉強する、
ということが増えていくでしょう。
そんな時、きっと整理された見やすいノートが、威力を発揮するはずです。

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じゃあ、どうして今まで直すことができなかったのか。

見ていないので想像ですが、
口で注意していただけだったのかもしれません。
「改行して書きなさい。」
「いやだ、こっちの方がいい。」
そんなやりとりだったのではないでしょうか。

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注意と支援は全く別物です。
注意は「~してはいけません。・・・しなさい。」
のようなイメージです。

支援は「・・・してみよう。・・・のように真似してみよう。・・・って言ってみよう。」
のようなイメージです。

支援は、場合によっては、言葉も必要ありません。
ただ、横で見本を見せたり、誘導したりするだけです。

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簡単じゃないか!
そう思われるかもしれません。

しかし、支援は実はこんなにすんなりいきませんし、根気もいる作業です。
支援者は、上手に黒衣にならなければなりません。
そして、どうやって支援するかのアイディアがその場面に合っていないと、ミスマッチを起こし、うまく事が運びません。
 
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それから、支援を受け入れる側の基礎が整っていないとできません。
・真似をすることができる。
・嫌だなと思っても、人とうまくやっていきたいから葛藤しながらも受け入れる素地がある。
支援し、ネガティブなこだわりを修正していこうと思ったけれど、
基礎がまだ備わっていなければ、基礎作りから始めなければなりません。
結局は、私が大切にして育てたいと繰り返し書いている
「社会性の基礎」に行き着いてしまうのです。

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①問題が起こったから対処する。
それも大切です。
しかし、
②問題が次々に起こっても、すぐに修正する手段を持っている、
または、
③そもそも問題が起こらないように防ぐ、
ということが大切だと考えます。

例をあげると、
工場で製品を作り、
時々不良品が混ざっていて、クレームが来る。
それに対応するのが①です。
不良品かどうかを、検品により精度良く取り除ける手段を構築しておく。
これが②です。
工場で不良品が頻発しないように、
ラインの問題点を見つけて、改善する。
これが③です。

工場のカイゼンとよく似ていると思います。
ただ、対象が人なだけです。
 
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次は工場に働きに行ってみるかな?

タカマミー