2016年4月27日水曜日

ささやき女将

子どもが何かを発表しないといけなかったり、
何かアイディアを書かないといけなかったり。
そんな機会は意外と学校生活の中に溢れている。

「学区の中で自分の好きな場所を紹介しましょう」
「今日の素敵だなと思ったお友達を発表しましょう」
「私が考えた今日のめあては、、、」

「こんな音があればいいなと思ったことを考えて書きましょう」
書けなくて言えなくて、固まる子の多いこと。
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「自分の考えたことを言いなさい。」
「時間がないから早くしましょう」
「考えていなかったんですか?」

そんなことを言われても焦る。
 
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そんな時、タカマミー先生は中腰でスススーっと近寄っていって
耳元でささやく。

「例えば・・・一日一回は手をあげる、とかどうかな。」
「先生は、○○してくれたお友達が素敵だと思ったけどな。」
「例えば、川のとか葉っぱの音とかどっちが好きかな。」
 
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たいていの子どもはそれで少し安心して
例えば・・・をコピーしたかのように発言する。
 
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でも、
「みんなの前で堂々と言えた」
「なるほどと言って貰えた」
という経験はちゃんとできるのです。
 
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「言いなさい、頑張りなさい」
というよりも、
支援してやって「結果的にできた」
という結果を残すこと。
 
私はそんな風に支援をすることが多い。
 
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できたって感覚を得た後に、
子どもは私を見る。
こっそり、「やったね」という合図を送る。
その顔は、言わされたという表情ではなく、
先生やったで言えたで!って表情をしていることが多いのです。
 
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タカマミー

2016年4月22日金曜日

支援者としての新たなスタート

新しい学校に任用されて、
学年付きの教員(支援担当であり、副担任のような役割)
として2週間が経過しました。

1週目、全体を見渡してみて、キーになる子どもを見つけ、
様子を観察し、押したり引いたりすることをはじめました。
その中で、最も逸脱行動が激しかった児童A(発達障害児)との関係を作ること、
これが4~5月の目標だなと考えました。

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はじめにAくんに近づいてみた日。
学年集会で、体育座りをするように言われているのに、
座り方も定まらず、隣の子にちょっかいを出し、
いたずらをしたり、喋りかけたり、
教室から持ってきた粘土とハサミを放さない、
隙あらば逃げだそうとするAくん。

私は彼の真後ろに座り、
脚全体で覆うようにして、彼に体育座りを促すような格好をしました。
何も話さず、ただ包み込んでしばらく座っていました。
Aくんはすぐに私に身体を預け、じっと静かにしていました。
しばらくして、あまりに動かないのでのぞき込むと、
すやすや寝ていました。

「あーこの感じ、落ち着くんだなぁこの子。」と私は思い、少し手がかりを見つけた気がして嬉しかったのです。
でも、それを見つけた他の先生は、叱り注意して起こそうとしていました。
そう、学校ですからね。
他の教員との温度差は、仕方がないとしても、
私自身が他の教員から嫌がられずに、立ち位置を確保するのが難しいということも感じました。

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教室で。
彼はやることがないというのが辛いらしく、
とにかく手当たり次第何かをしています。
本を読んでいると思ったら、その本を落とし、
次の本を取ってきては読み、
粘土を出して何か作り、
粘土をハサミで切ったり、
それを持ってウロウロしたり、
誰かを攻撃したり、
ロッカーの中に入ったり
ぼんやりしていることがありません。

先生の注意はあまり入りません。
全く言うことを聞かないわけではないのですが、
基本自分のしたいことを手当たり次第しています。

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昨年様子を、昨年の担任の先生にうかがいました。
「そうですね、勉強はやる気になればできるし、
全く話を聞いていないわけでもない。
でも、授業中勝手に本を読んだりすることに関しては、
人に迷惑をかけていなければ、放置せざるを得ないことが多かったです。」

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そこから1週間が過ぎ、
今週の水曜日には、Aくんは完全にタカマミー先生大好きっ子に変身していました。
「先生、教室に居て。」
「先生、あれやろう。」
「先生、昼休み、ダンゴムシ探しに行こう。」
「たかちゃん!(と呼ぶことにしたらしい)」

そして、促せば授業でやらなければならないことにも取り組むようになりました。
ただ、頭はいいので、すぐ出来てしまうため、
余計に課題を与えたり、別に問題を作ってやったり、
復習させたり、そうやって暇な時間がないことも気に入っているようです。

まだまだ、暇になると本を取ってきて勝手に読みますが、
「本読んでいい?って聞いてからにしてや」と言えば、
素直に「本読んでいい?」と言います。

「さあ、切り替えるときやで」と私が言えば、
多少強引に本を閉じても、「あーもう」と言いながらも、
教科書を探しに行ったりします。
 
もう粘土やハサミは全く出さなくなりました。
 
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今後の課題は非常にたくさんあるものの、
まずは支援者である私にしっかりとした信頼をおき、人として好きになってくれました。
まずはそこからだと私は考えています。

この人は絶対にボクを裏切らないし、嘘をつかない。
この人はボクのことを真っ直ぐ見てくれる。
この人はボクが楽しいと思うことに100%付き合ってくれる。

まずは対象児がこんな風に思ってくれること。

しかし、ダメなことは断りますし、
嫌なことは嫌だと言います。
そして、関係ができはじめたら、約束をしそれを守ることも徹底します。
私はお付きの人じゃありませんから。
あくまで、支援者であり、教員です。

それでも、
先生に側に居て欲しいな。
先生に見て欲しいな。
先生と一緒にやりたいな。
先生に報告したいな。
そんな気持ちが芽生えてくれたら、
行動を修正していくことができます。
褒めてやり、良い行動を増やしていくことができます。

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息子とは試行錯誤しながら何年もかかった、こういった関係でしたが、
さすがに通常学級に居る子供です。
2週間でかなりの手応えを感じることができ、見違えるようです。

決して簡単ではないことですし、
しかも長い時間かけたからといって成果が出る物ではない。
むしろ、教育現場では、
短時間である程度の成果を出さないと、私の存在意義が問われる(と勝手に思っています)。
その緊張感いっぱいの2週間でした。

でも、やっぱり面白いし楽しい。
彼らの心が真っ直ぐこっちに向かってくる感覚や、
キラキラした瞳を見ると、本当に嬉しくなる。

すっきりした気分で、いい週末を迎えることができそうです。

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タカマミー