2015年7月15日水曜日

空気を読む

空気を読む。
KYなんて言葉が造られたくらいに、
空気を読めないことは、あまり良くないこととして扱われる世の中です。

そもそも「空気を読む」ってどういうことなのでしょうか?
 
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私の息子は、典型的な自閉症、特に社会性の重さが顕著でした。
社会性の重さが顕著な子は、
「クレーン現象」という行動をとることがあります。

例えば、子供が食べようとしているお菓子の袋が開けられないとします。
子供は側にいるお母さんの腕を掴み、
お母さんの腕をお菓子の袋のところに持っていこうとします。
お母さんに「お菓子の袋を開けろ」という要求です。

まさにお母さんの腕をクレーンのように扱って、
自分の要求をかなえようとする行動です。

健常児の、まだ言葉をしっかり操れない幼児期に見られることもあるようです。
しかし、大きく違うのは、

(A)お母さんの顔(目)を見ながら腕を持っていこうとするのか
(B)お母さんの顔(目)を見ないで腕を持っていこうとするのか

ということだと思います。

健常児は、要求をかなえようとするとき、
お母さんの手が要求をかなえてくれることを知っているので、
思わず腕を持ってしまいますが、
その時(A)のように、
お母さんにアイコンタクトをして「目で」要求を訴えることができます。

しかし、社会性の重い発達障害の子供は、
要求をかなえてくれるのは誰か第三者の「手」であって、
その先に意思の伝わる顔や目があるということに気付いていません(B)。
つまり、第三者の手であれば、誰の手でもよいのです。
手さえ持っていけば、自分の要求がかなうと思っているのです。
 
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息子は当然、(B)のようなクレーンでしか要求を伝えることができませんでした。
要求があるときでさえクレーンですから、
それ以外の場面で私の顔や目を見ることは皆無です。

これはとても大きい問題として、私にのしかかりました。
つまり、物を見ることはできるけれども、
人を見る(気にする)行動が皆無だということなのです。
このことが及ぼす影響は、
社会生活全般にわたり問題行動としてあらわれます。

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息子は今でもまだ、アイコンタクトや人を見ることは不得意ではあります。
しかし毎日毎日、私と一緒に練習をしたので、少しずつ上手になりました。
 
自分の要求をかなえて欲しい時は、
相手の目を見て「~していい?」と聞くことができるようになりました。

すごく楽しそうなことをしている人を見たら、真似をすることもあります。

自分が見ているYouTubeの動画で好きな場面が出てきたら
「お母さん、落ちたー!」と一緒に見て共感して欲しいことを伝えてきます。
 
「足、しびれた~」と私がいえば、
「お母さん、足しびれた~?」と足をツンツンして共感してくれるようになりました。

自分が何か悪いことをしてしまい、私が怒った表情をしていると、
その表情がおさまるまで”シュン”としています。
「お母さん、怒ってる?」と聞いてきます。
 
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自分のコンディション(体調・精神面)が悪かったり、
非常に気になりすぎることがあったり、
見通しがつかなかったりして混乱している時など、
周りをみるどころではない時は無理ですが、
落ち着いているときであれば、
彼なりの「空気を読む」行動をするようになりました。
 
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「アイコンタクト」ができるようになること。
そして、相手の表情や動きを見ることができるようになること。

これが、「空気を読む」ということに、密接に関係していくと思います。

これらが元々備わっていない発達障害の子供には、
とてつもなく大変な仕事ではあるのですが、
多少なりとも育てていくことが可能だと、息子を育ててみて感じます。

これは、一方的に話してしまうようなタイプの子供でも、
同じように育てることができます。
人の表情や動作を見て、自分の行動をどうすべきか
判断することに繋がっていくからです。

完璧を目指すことは無理でも、
ちょっとでも育っていけば、
彼らの、また親の世界は広がるはずです。
 
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どれだけ世話をしても、
どれだけ愛情をかけても、
見返りがない子育て。

息子のような社会性の重い子を育てていると、
そんなフレーズが時折頭をよぎります。
しかし、彼が私の目を見て何かを訴えてくれる、
それだけで十分な見返りだと感じるのです。
親として、ただただ、嬉しいのです。
 
永遠の片思いは、続かない。
親だって、子供から求められたいのです。
愛を感じたいのです。

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見返りのない子育てを続けることは、
そもそも無理があります。
肉体的にも、精神的にもぼろぼろになる子育てです。
どこかで糸が切れてしまいます。
 
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ツンデレな息子ではありますが、
今では私は息子からの愛を(少しは)感じることができますし、
やっと両思いになれたと思います。
だから、幸せに思えるのです。
 
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タカマミー

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